ぼーっとしているとき、脳は一番働いている

暇を才能に変える

― 沈黙のフルタイムの終わりに ―

「何もしてない時間って、もったいないのかな」
そう思っていた時期がある。
社内ニートとして、デスクに座りながら時計の音を聞いていた日々。
まわりの人たちは忙しそうに働いていて、
自分だけが止まっているように感じた。
その静けさは、まるで自分の存在を薄くしていくようで、
焦りと罪悪感でいっぱいだった。

けれど今思えば、あの時間は“停止”ではなく“整える時間”だったのだ。
人は、止まっているように見えても、
心の奥ではちゃんと動いている。

ぼーっとしている時間に、脳は整理をしている

脳科学では、「デフォルト・モード・ネットワーク」という働きがある。
これは、何もしていないときに活発になる脳の回路。
過去の出来事を整理し、これからのことを静かにシミュレーションしているという。
つまり、人は“ぼーっとしているとき”にこそ、
内側で最も深く考えているのだ。

思えば、何もしていない時間にこそ
心の整理や答えがふっと浮かぶことがある。
洗い物の途中や散歩の帰り道、
ただ空を眺めていた瞬間に、「あ、こうすればいいのか」と気づく。
それは脳が静かに働いていた証拠だ。

“止まる勇気”を持てた人は、ちゃんと生きている

世の中は「動いている人」が評価される。
忙しさや成果でしか自分の価値を測れなくなって、
“何もしていない時間”を怖がる人も多い。
けれど、止まることを選べる人は、実はとても強い。
なぜなら、「休んでいる自分を責めない力」を持っているからだ。

私は社内ニートの頃、動けない自分を何度も責めた。
でも、動かない時間の中で気づいたのは、
“生きる”というのは働くことだけじゃないということ。
食べて、眠って、季節の変化を感じて、
ときどき笑う。それだけで、生きている証になる。

休んでも、ちゃんと進んでいる

止まっているように見えても、
人の内側では小さな変化が起きている。
新しい価値観が芽を出し、
古い考えが静かに抜け落ちていく。
焦らなくていい。
あなたがぼーっとしているその時間も、
未来へとつながる道の一部だ。

“沈黙のフルタイム”は、
何も生まれない時間ではなく、
次のステージへ向かうための“心の助走期間”。
あの頃の沈黙があったからこそ、
今の自分が、少しだけ優しくなれた気がする。

ぼーっとしているとき、
脳はちゃんと働いている。
そしてあなたもまた、ちゃんと生きている。
それだけで、本当にすばらしいことだ。

── 社内ニート経験者ぽしゃより

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